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イスラームにおいては、あらゆる形と種類の危害が禁じられています。イスラーム法の基本的原則のひとつとして、預言者はこのように宣言しています:

“被害を受けることも、与えることもあってはなりません。”(アル=ハーキム収録の伝承)1

被害の防止とその予防は、後に行われるそれへの対処よりも優れたものです。イスラーム法において述べられる別の法的裁定には、次のようなものもあります:“被害の回避は、利益の獲得よりも優先されるべきものである。” したがって、人間の欲求を満たすことによって利益を確保したり、農業や工業を発展させて供給をしたり、コミュニケーションを樹立したりすることを目的とするすべての行動は、被害、損害、腐敗などがないように実行に移されなければなりません。それゆえ、考察、計画、実行のそれぞれの段階において、いかなる形の被害や腐敗も付随しないような細心の注意が支払われる必要性があるのです。

1.廃棄物、排気ガス、洗浄物質、その他の有害物質

人の日常生活と工業地域、そして近代テクノロジーの使用の結果として排出される廃棄物や排気ガスは、それによる環境破壊を防ぐため、慎重に処理または排除されなければなりません。また、そうした有害な影響から、環境の美しさや活力だけではなく人間も同様に保護し、その他の環境的特性の保護も確保することが重要です。廃棄物の蓄積は、私たちによる浪費が主な原因です。イスラームによる浪費の禁止は、それらをゴミとして処分するのではなく、可能な限り資源と廃棄物の再生・再利用をすることを要求しています。

預言者は、人が水源、公道、日陰、または生き物の巣に排泄することを禁じています。2この禁止の根底にある価値観とは、重要な資源と一般的な生息環境における汚染の予防であると見なすことが出来ます。廃棄物、排気ガス、そして同様の汚染物質は、それらの源泉において最善の方法で処理され、廃棄の際には同規模、またはより大きな被害や悪影響の出ないよう気をつけなければなりません。これに関連する法学上の原則として、このようなものがあります:“同様の被害、またはより大きな被害をもたらすような方法で被害が排除されてはならない。”

このことは、家庭や工場、農場、またはその他の公的・私的な敷地内で使用される洗浄剤、およびその他の有害物質に関しても同様に適用されます。それらによる有害な影響が発生するよりも前に、あらゆる方法を駆使して回避・予防をすること、そしてもしもそれが起きてしまった場合には、人と自然・社会環境からそれを駆除することが絶対的に必要なのです。実際にそれらの物質からもたらされる被害が、その利益よりも重大であると証明されたのであれば、それらは禁じられるべきです。その場合、私たちは効果的かつ無害、もしくは最低でもより害の少ない代替策を取らなければなりません。

2.防除剤

この原則には、殺虫剤、除草剤を含むすべての防除剤が含まれます。こうした物質の使用は、現在および将来の人間や環境に対する有害な影響をもたらすべきではありません。したがって、人や生態系に悪影響を及ぼすことにつながるものは、それが何であっても規制・禁止されなければならず、もしもその規制によって特定の個人や団体の利益に影響が及ぼされるのであっても然りです。これは“個人の被害は大衆の被害を回避するために認められる”という原則に則っています。被害の回避のためには、そうすることによってその被害と同様、またはより大きな被害をもたらさないことを前提に、あらゆる合法的方法が取られるべきです。これに関連する法学的規定は、“二つの害悪の内、より害悪の少ない方を選べ。”というものです。もし防除剤の使用が避けられないような状況のときは、“緊縛した必要性のあるものは、禁じられたものの使用を合法とさせる”のですが、“あらゆる必要性は、それに見合った価値によって判断される”のであり、“その免除される原因となる必要性がなくなった場合、その合法性もなくなる”のです。

ペスト・コントロールにおいては、これらのイスラーム的原則と価値観に沿って、最善かつ被害を最小に抑える方法が求められます。予防策、生物学的コントロール、無害の忌避剤、生物分解性物質、狭域殺虫剤などが、より破壊的な選択肢よりも優先されるべきです。さらに、それらは人間の生命、稲作、家畜を守るために、最大の効率と有効性を考慮し、神の創造物に対する最小限の影響を念頭に置いて、慎重に計算して適用されるべきです。

3.放射性物質

上記の原則は放射性物質にも該当しますが、放射性物質は極めて有害であるだけでなく、途方もない長期に渡って残存します。私たちは人間と生態系に対して有害なその影響を阻止すべきです。すべての放射性廃棄物を首尾よく処理することも急務事項です。それが不注意や機能不全によるもの、あるいは核実験による影響であれ、核施設からの放射性物質漏洩を防ぐには、特別な予防措置が必要とされなければなりません。

4.騒音

工業、マスメディア、交通などには騒音が伴うため、その回避または最小化をするあらゆる方法が模索される必要があります。騒音は人間と環境の生物に対して悪影響をもたらすため、その減少と予防の必要性はイスラーム法の命令によってあらゆる方法が考慮され、その被害が最大限に抑えられるべきです。

5.酩酊物質、麻薬

酩酊物質、麻薬は人間に対して肉体的・精神的な悪影響を及ぼし、その結果、家族、職業、資産、名誉、誠実さなどの喪失に被害がおよびます。酩酊物質と麻薬が肉体的、社会的、そして精神的にかなりの影響を及ぼすということは、疑いの余地なく証明されています。それゆえ、あらゆる種類の酩酊物質と精神作用をもたらす麻薬はイスラームにおいて禁じられています。それらの製造、販売、あるいはそれらに関わるあらゆることや、その製造に間接的に携わることさえも禁じられます。このことから、すべての腐敗、危害、損傷、汚染から14世紀にも渡って人間の生命と社会的・物理的環境を保護してきたイスラーム法の普遍性が見て取ることが出来ます。

6.自然災害

人間と環境に対する自然災害である洪水、地震、火山噴火、暴風雨、大火事、砂漠化、害虫被害、疫病などに対しては、その影響を最小限に食い止めるためのありとあらゆる事前対策が取られていなければなりません。また、ときに自然災害は人間の行為が原因のひとつとなっていることも、認知しなければなりません。多くの場合、災害発生の結果もたらされる人命や財産喪失の被害は、不適切な居住区、建物、土地の使用によって悪化しています。したがって、それらの影響は自然災害への理解を元にした先見的な計画によって大幅に軽減することが出来ます。不適切な土地の使用やそこでの活動は、人間の生命と健康に危害を及ぼす可能性のある地域、または自然災害の起きやすい地域において認められるべきではありません。

人間の生命、資産、利益の確保は必要かつ重要なことであり、“重要な義務を果たすために必要とされるものは、それ自体が義務となる”のです。イスラーム法は“被害は排除されるべき”であるという立場を貫き、“被害の排除は可能な範囲内において行われるべき”であるとします。しかし原則に基いて、取られるべき保護措置はそれ自体によって他の悪影響をもたらしてはならず、“同様の被害をもたらすような方法で被害が排除されてはならない”のです。

  1.  このようなイスラームの法的規則は、アッ=スユーティーやイブン・ヌジャイムによる「アル=アシュバーフ・ワン=ナザーイル」や、「マジャーラート・アル=アフカーム・アル=アドゥリーヤ」などに見受けられます。


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