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古代イスラエル王国についての最終回は、ソロモン王とシバ女王の逸話です。多くの人は、その人物像と物語がバイブルの歴史のものと類似していることについて興味を持っているかもしれません。しかし、イスラーム的観点においては、根本的な部分において異なります。

ソロモンは預言者でありながら、国王でもありました。神の預言者としての彼の使命とは、神が唯一であり、共同者や同位者がないという教えを伝えることです。彼は神の法を遵守しました。彼は国王として、イスラエルの民に、富と繁栄に満ちた黄金期をもたらしたのです。

ソロモンの王国と軍隊は比類なきものでした。彼の軍隊は人間の軍勢、ジンの軍勢、そして鳥の飛行部隊によって構成されていました。ソロモンは鳥と会話し、ジンを操り、人間の敬意と忠誠に訴えかけるすることが出来ました。彼は数十万人とも言われる膨大な軍隊を従え行進しました。

エルサレムのモスク

ムスリムは、ソロモン王によってマスジド・アル=アクサー(エルサレムの聖モスク)が再建または拡張されたと信じます。イスラームの歴史によれば、預言者ヤコブによって彼の祖父である預言者アブラハムがマッカに神の家を建てた40年後、マスジド・アル=アクサーは建てられました。イスラームでは、マスジド・アル=アクサーの敷地内において、ソロモン王が寺院を造ったという概念を完全に否定することから、ユダヤ教との相違が発生しています。それは、現在その聖地において軋轢を生じさせている原因の一つです。3大一神教におけるソロモン観の小さな違いは、時と共に大きな溝を生み出したのです。

シバへ

エルサレムを首都として王国を確立させた後、ソロモンは軍隊を率いてシバとして知られた土地へと進軍しました。この地には季節風による雨がありました。それゆえ人々はダムを造り、灌漑を網のように張り巡らせました。不毛な土地は、広大な庭園や肥沃な平原へと変容しました。この緑化について知ったソロモンは、その変化を自らの目で確かめたいと思いました。

軍隊が進軍していると、蟻の大群が巣くう谷間に到達しました。小さな蟻の一匹が進軍してくる軍隊を目にし、仲間にこう呼びかけました。

“蟻たちよ、自分の住みかに入れ。スライマーン(ソロモン)とその軍勢が、それと知らずにあなたがたを踏み躙らないよう。”

(クルアーン27:18)

ソロモンは蟻の会話を理解し、蟻たちは自分たちが意図的に壊滅させようとはしていないことに気づいている事実を喜び、微笑みました。ソロモンは蟻の生命を守った神に感謝しました。彼は鉄の拳によって支配する、抑圧的な王などではありませんでした。ソロモンは神の被造物すべてに敬意を払う人物でした。

ソロモンが蟻の大群に遭遇した後、軍隊を査察すると、一羽の鳥がいなくなっていることに気付きました。彼はそのヤツガシラの所在について尋ね、不在に対する懲罰を決心していました。ヤツガシラは地下水の検知が出来る鳥で、ソロモン王はシバの平地がなぜ青々とした肥沃な土地であるかということに特に関心を持っていたのです。間もなくヤツガシラが戻ってきて、ソロモン王にこう上申しました。

 “わたしは、あなたの御気付きにならない事を知りました。わたしは確実な情報を、サバア(シバ)から持って来ました。わたしは或る婦人が、人びとを治めているのを発見しました。かの女には凡てのものが授けられ、また素晴しい王座がございます。わたしはかの女とその民が、アッラーを差し置いて太陽を拝んでいるのを見届けました。そして悪魔が、かれらに自分たちの行いを立派だと思い込ませ、正道からかれらを閉め出しているので、正しく導かれておりません。”

(クルアーン27:22−24)

ヤツガシラは真の服従をもって神を崇拝していました。その鳥はソロモン王に対し、ビルキス女王の王座は一世を風靡する、実に立派なものであるにも関わらず、究極の王座は全能なる神に属することを告げたのです。ソロモンはヤツガシラにこう述べました。

 “わたしはあなたが、真実を語ったのか、または嘘付きの徒なのか、直ぐ分るであろう。あなたはわたしのこの手紙を持って行って、それをかれらに落としなさい。それから退いて、かれらが何と返事するかを見るがいい。”

ヤツガシラは女王の膝に手紙を落として飛び去ると、隠れて女王と参謀たちの会話に耳を澄ませました。

 “かの女(王)は言った。「長老たちよ、本当に尊い手紙がわたしに届けられました。本当にそれはスライマーン(ソロモン)から、慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において(齎されたもの)。それはこう言っている。わたしに対しあなたがたは高慢であってはなりません。(真の教えに)服従してわたしのもとに来なさい。」

かの女は言った。「長老たちよ、この事に就いてわたしに意見を聞かせて下さい。あなたがたが証言するまでは、わたしは事を決定しないでいよう。」

かれらは言った。「わたしたちは力量もあり、烈々たる武勇も授っています。だが大命はあなたさまの手にあります。どう御命令なさるかよく御考え下さい。」”

(クルアーン27:27−33)

ビルキス女王は戦争を始めることが出来たにも関わらず、ソロモン王に贈呈品を送るという選択肢を取り、彼女の英知を示しました。ソロモンは、彼の望むものは既に、神がすべて授けて下さった旨を説明し、それらの贈呈品を返却しました。彼はビルキスに対して敬意に基づいた対応をしましたが、もし彼女が太陽崇拝をやめなければ、彼女の王国に侵攻し、人々をそこから追い出さざるを得ないことを指摘しました。そこでビルキスは再度、英知と善き判断力を示すのです。

ソロモンと女王

ソロモンの言葉に感情を害し、行動に出る代わりに、ビルキスはまず彼を訪問し、派遣した使節の述べた驚異について自ら確認することにしました。彼女が旅路にある中、ソロモン王はジンに対し、ビルキスの壮麗な王座を持ってくるよう命じました。それは瞬く間に彼のもとにもたらされました。ジンの能力から、そうした速さが可能だったのです。ビルキスが到着すると、ソロモンは彼女の目の前にある王座について尋ねました。彼女はその生まれ持った英知と外交的手腕からこう言いました。「それはまさに私のものであるかのようです。」

ソロモンの王国の驚異を実体験したビルキスは、彼女が英知に溢れる素晴らしき指導者の前にあることを実感しましたが、何よりも、神の使徒としての彼の地位も認識できたことが、彼女にとっての収穫でした。ビルキスは直ちに太陽崇拝の破棄を宣言し、神の教えを受け入れ、彼女の民にも同じことをするよう激励することを誓いました。イスラーム学者たちは、ビルキスの生まれながらの英知が彼女を真理へと導いたことを指摘しています。

ソロモンの人生は驚きに満ちたもので、彼の死も例外ではありませんでした。彼は王座に座ったまま、王国を見渡しながら死んだのです。ジンたちは彼らの主人がまだ見ていると思い、せわしなく働き続けました。小さな蟻がソロモンの体を支えていた杖をかじり、それが彼の手から離れて彼が倒れこむと、ようやく彼の死があらわになったのです。

 “われがかれ(ソロモン)に死の断を下した時も、かれらにその死を知らせたのは、一匹の地の虫がかれの杖を蝕ばんだことであった。それでかれが倒れると、ジンたちは(初めて)悟った。”

(クルアーン34:12−14)

ユダヤ・キリスト教の歴史においては、ソロモン王が度を超えた行為によって知られる男として不当に描かれています。ムスリムにとって、彼は英知に満ちた高貴な人物なのです。イスラームでは、預言者ソロモンが神の教えに背き、偶像を崇拝したという観念を完全に否定します。彼は、神のご満悦を得ることにその人生のすべてを費やした預言者の息子でした。彼は父ダビデの王国を引き継いで強化し、イスラエルの民に黄金期をもたらしたのです。彼は多くの才能を有し、その人生は驚異と奇跡によって象徴されますが、彼は賢明にも、来世にこそは真の永続的な報奨があることを理解していたのです。

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